ウタカゼミニリプレイ『花を求めて』

作:加藤亜由美


【プロローグ ~コビット族の小さな小さな村~】

 ここはコビット族の村“ダハの村”。
 不自然に枯れた歌風の木。歌風の木の青々とした葉は茶色くなり、茶色い葉が村に降り注いでいます。それだけでなく、その周りに広がる緑の植物さえも枯れ、吹く風も土を運び茶色い砂埃が起きるだけ。生命の色を失った村は、訪れたウタカゼたちにやるせない思いを抱かせました。

GM:さて、村長から依頼を受けたあなたたちですが、ダハの村の勇気ある若者イオンが「名もなき神殿」の入り口まで案内してくれます。

 イオンが住んでいた村から30分ほど歩き、ようやくそれは見えてきました。

イオン(GM):「ここが遺跡の入り口です」と、3人を振り返る。
ルカ:おお、道よく知ってるな。
イオン(GM):「(申し訳なさそうに)でも、私はここまでしかわかりません。中の構造はわからないのです」
ルカ:じゃあ、「ありがとう、イオン」
GM:あれ、ここでさよならするの?
ルカ:うん、さよならする。「(手を振って)ありがとう、イオン」
ニーノ:そうだね、「ありがと、イオン!」と笑顔で手を振る。
イクル:「ばいば~い」と笑顔で見送る。


【第一章 ~いざ、名もなき神殿~】

 大きな人々が残した「名もなき神殿」、小さなウタカゼたちの前にそびえる建物は全貌を見ることができません。まわりは痛いほどに静まりかえり、枯れた植物は風に吹かれるだけで粉々に吹き飛んでいきます。なんとも不気味な場所でした。

GM:イオンと別れたあなたたちの目の前には、見上げるほどに巨大な鉄製の扉が見える。きっと大きな人々が神殿へ入るのに使っていた入り口なのだろう。
ニーノ:重たそうな扉だね。
ルカ:ぼくたちじゃ無理じゃない?
GM:そう、この扉を開けるには、1人の力だけでは不足している。ここは全員で、協力して開けるのがいいだろう。全員で[協力判定]を行ってください。
イクル:じゃ、頑張って。
ニーノ:どうするの?
イクル:「2人とも頑張って!」と後ろの方から見守る。
ルカ:え、うそでしょ。イクルーっ。
GM:ちゃんと全員で振ってください。【勇気】でお願いします。
イクル:(渋々扉の前に移動し)ボクじゃどうせむりだよ~。
ルカ:イクル、早く持ち上げろー!
ニーノ:(噴き出して)持ち上げるの?
ルカ:あ、持ち上げないか。
GM:扉だからね、持ち上がらないよ。それじゃあ振ってください。
イクル:どうやって開けるの?
GM:ニーノは【勇気5】、ルカは【勇気3】、イクルは【勇気2】だね。それがダイスプール、つまり振れるダイスの数になるんだよ。
ニーノ:……あ、やっべ。
ルカ:ちょ待って、ニーノそういうキャラなの?
ルカ・イクル:やっべ、マジやっべ(笑)
ニーノ:2人は無視して、――あ、……1……ある、……5……も!
ルカ:ニーノがやっべえわ。
ニーノ:本音が漏れただけだから! ほら、行くよ!
GM:さて、何成功かな?
ルカ:[4成功]! 「うりゃーっ」と叫ぶ。
GM:全員が力を合わせて扉を押すと、ギギギと鈍い音を立てて開いていきました。
イクル:も、手が痛い……。
GM:痛い?
ニーノ:早いよ、まだ入り口だよ?
ルカ:まだまだ先は長いよ、イクル!
イクル:もうやだ帰ろう……(ぐったりとして、両手をさする)。
ニーノ:ダメダメ、村の植物を復活させるには「希望の宝石」が必要なんだから!

 ニーノが先導を取り、開いた扉から真っ暗な遺跡のなかへと入って行きます。ルカとイクルはその後ろ姿を見て、一瞬顔を見合わせたかと思うと、慌てたように走ってニーノのあとを追いました。


【第二章 ~名もなき神殿のなか~】

 遺跡のなかは薄暗く、埃っぽい上にジメジメとして臭い。3人は何があるのか分からないと体を寄せ合い、警戒しながら少しずつ進んで行きます。廊下はどこまでも長く、奥は暗闇に呑まれて見えない。3人は扉から差し込む明かりが見えなくなる前に足を止め、あたりを見回しました。

GM:それじゃあ、ここは大きな人々の遺跡のなか。あたりは薄暗い。見上げる程に高い天井に、ガラス製の球体がぶら下がっているのが分かる。1m20cm程の高さの壁に、小さなレバーがついている。あのレバーを引けば何か起こるかも知れない。
イクル:いやあ、危ないよー。
ニーノ:「行く!」とみんなより前に出る。
ルカ:え、行くの、ニーノ?
ニーノ:行くよ!
イクル:ほんとに行くの?
ルカ:え、ちょっとニーノやめとけやめとけ!
ニーノ:あたし、行くよ!
ルカ:やめとけって!
GM:しかし16cm程の人達にとって1m20cmって結構高い。
ニーノ:うん、高いね。
イクル:やめとかない?
ニーノ:(2人を無視して、レバーを見上げ)レバーかあ……。
イクル:やめとかない?
GM:カチンと引っ張れば、何かいいことが起こるかも知れないよ。どうする?
ニーノ:どうする? 引く?
ルカ・イクル:引くの?
ニーノ:じゃあ引かない?
ルカ・イクル:引かないの?
GM:あなたたち協力しなさいよ。(呆れたように笑う)なんでニーノがやろうと言ったことを拒否するの。
ニーノ:引かない? いいの?
ルカ:うーん、これは、レバーの位置が相当高い?
GM:1m20cm、見上げるところだね。ちっこく見えるぐらい。
イクル:ど、ニーノ、どうする? どうやって引くの?
GM:壁とかよじ登って、フリークライミングすればレバーまでたどりつけるよ。
ニーノ:登れそうな壁なの?
GM:登れそうな壁なの。ごつごつしてる壁。
イクル:ボクの勇気じゃだめだよう……。
ニーノ:登れるなら、じゃあ登る!
GM:それじゃあ【勇気】+〈冒険〉で、2回連続で成功してください。
ルカ:ニーノ頑張って~。
イクル:がんばれ~。
ニーノ:頑張る! でももしかしたら落ちるかも。……あっ。
GM:えっ?
ニーノ:成功した、大丈夫大丈夫! [2成功]かな。

 ニーノは身を軽くするために武器をルカとイクルに預けました。それから壁にできた小さなくぼみに指をかけ、ゆっくりと登っていきます。

GM:びっくりした。
イクル:急に「あっ」って言うから(笑)。
GM:本気でびっくりした。じゃあ2回目。
ルカ:何成功?
ニーノ:……[2成功]だね!

 4分後、ニーノは天井まで登りきり、片手を離してレバーに手をかけました。

GM:良かった。ニーノがレバーをカチリと引くと突然、天井の球体が輝き始め、あたりは昼間のように明るくなった!
ルカ:な、なんだなんだ?
イクル:まぶしっ 目が、目がっ、ああ~
GM:そんなに眩しくないでしょ。辺りがとても見やすくなったところで、次はどうしますか?
ニーノ:とりあえず下りていい? こら、笑ってないで!
GM:いいよ、どうぞどうぞ。(お腹を抱えながら)判定なしで下りていいから。
ニーノ:シュタッと地上に下り、「もう、みんなひどいな!」と怒る。
イクル:「ニーノおかえり」と頭をぽんぽん撫でる。
GM:それじゃあニーノが戻ってきたところで、どうしますか?
ルカ:んー、そうだね。とりあえず何かないか探す。
GM:【知恵】+〈感覚〉で探してください。
ルカ:いえ~い! ……お、[3成功]!
GM:[3成功]?
イクル:[3成功・2セット]だね。
ルカ:「ん、あれは?」と辺りを見回す。
GM:[3成功・2セット]ね。何匹かの虫の羽音が聞こえてきました。
イクル:嫌な予感がするよ。
ニーノ:や、やだね。
ルカ:何かいらぬものを見つけてしまったような気がする。
イクル:何してるんだよルカ、やめてくれよ!
ニーノ:なんで見つけちゃったの!
ルカ:(2人を無視して満面の笑みで)うん、あれは虫だね!

 ニーノが点けた光に虫が寄ってきてしまったようです。廊下の奥、暗闇のなかで得体の知れない虫がかさかさと羽音を響かせ、近付いてきています。

ルカ:あれは虫だね。逃げた方が良さそうだね。
GM:えっ、逃げちゃうの?
イクル:逃げちゃだめだよ! 話し合ってみよう?
ニーノ:いや、戦おう!
GM:逃げると[撤退判定]でみんな【希望】に[1D6]のダメージですよ。
ルカ:あっ! そういえばそうなるんだっけ、これ。
イクル:……その虫はなんの虫? 何が来てるの?
GM:耳障りな羽根の音がします。今はそれだけ。
イクル:……嫌な予感がする。
ルカ:正体を聞かなくても嫌な予感しかしない。
ニーノ:姿は見えない?
GM:姿はまだちょっと遠いから。
ニーノ:じゃあちょっと近付こう。「行くよ!」と2人に向かって言い、ずんずん進んでいく。
ルカ:(ニーノを追い)うん、虫だね!
GM:さっき[3成功]してよく見えるようになったから……、3匹の虫が耳障りな音を鳴らしながら近付いてくる。――蚊だ! お腹を空かせた蚊が、ウタカゼの血を吸おうと飛び掛かってくる!
イクル:蚊!
ニーノ:(呆気に取られたように)蚊?
ルカ:やっぱり蚊だったな。
GM:蚊、でかいよ? 1.5cmぐらいあるから。
ニーノ:なにそれこわい!
イクル:こわいこわいこわい!
ルカ:想像してぞわっとした。逃げたい。
GM:逃げないでってば(笑)。さて、3匹の蚊があなたたちに襲いかかってきましたよ。どうします?
イクル:戦うしかないのかな……。
ニーノ:戦うよ!
ルカ:生きるためには戦うしかない!
イクル:……そうだね、戦わなければ生き残れないよね。

 目の前には自分たちの顔に近い大きさがある、同じ数の蚊たち。けれど瞳が赤く光っていないところを見ると、どうやら普通の動物なのかもしれない。しかし血を吸われては、ウタカゼたちはひとたまりもないだろう!

GM:それじゃあ戦闘を始めます。リーダーは誰かな?
ルカ:ニーノだね。
イクル:イニシ……イニ……?
ルカ:イニチアチブロール。先攻後攻の判定だね。
イクル:そ、それが言いたかったの!
ニーノ:いいよ、まだ使わなくて。
GM:歌風の力を使えば先攻取れるけど、使わなくていい? ならニーノは[1D6]を用意して、より高い数字を出した方が先攻です。
ニーノ:あ、ああ……?
ルカ:なんで傍観者なの。
GM:おりゃ!
ニーノ:ちょ、なんでマスターが……6……出すのっ!
イクル:ニーノは? ……2……?
ルカ:まずいっ
GM:えーっと、攻撃方法はランダムだから、……1と4……ニーノ、……2と5……イクル、……3と6……ルカで、……2……!
イクル:ん?
GM:イクル! 君に決めた!
イクル:あれっ、うそだ!
ニーノ:イクルーっ!
ルカ:イクルそっち行ったぞー!
イクル:来ないで来ないで!
GM:来るなと言われて行かない敵はいない! 【知恵】+〈狩り〉で攻撃するので避けてください。
イクル:【知恵】+〈狩り〉? だめだめだめ!
ニーノ:陰に隠れながら「イクル避けてー!」と叫ぶ。
GM:[2成功・2セット]!
イクル:2つしかないんだよ! クリティカルコール、クリティカルコールで! 龍のダイスは、えっと、……3……で!
ルカ:ニーノと一緒に隠れながら「イクル避けろー!」と続けて叫ぶ。
イクル:――あかん! 失敗。
GM:じゃあ、2ダメージと吸血の追加ダメージで[1D6-3]ですね。
ニーノ・イクル:イクルうううううっっ!!!
イクル:あうんっ!

 高く飛び上がった1匹の蚊が加速をつけてイクルへと飛びかかってきます! 避けることもできず、蚊の攻撃を受けたイクルは、攻撃を終えた蚊が自分から離れていかないことに気がつきました。

イクル:……お、おお? ……3……だ!
GM:イクルは刺さった蚊の針をむんっと跳ね除けました。よかったね(笑)。
ニーノ:「流石はイクル!」と陰から出てきて抱き着く。
GM:それじゃあもう1匹が、……4……! ニーノに向かって、同じく【知恵】+〈狩り〉で飛行からの攻撃をするよ。
ニーノ:え、あ、あたしも2つしかない! じゃあ、クリティカルコールで、えーっと、龍のダイスは……6……かな? ――おおう、……11……?!
ルカ:あっマジか。
イクル:あ、あ、だめだっ
GM:ニーノにダイレクトアターック! 2ダメージと吸血の追加ダメージで[1D6-3]ね。
ニーノ:う、うおおおおおっっ! ……3……!
ルカ:引っこ抜いた!
ニーノ:あたしは負けない! でいっっ!
GM:こうなったら3匹目だ! またイクルに攻撃をしかけます!
イクル:え?! だめだめだめだめ!
ルカ:イクルあぶなーいっそっち行ったぞ!
イクル:いやあ来ないでー!
GM:行くに決まってるでしょう! [2成功]!
イクル:……クリティカルコールで。
ルカ:イクル避けてーっ
イクル:ダメだー刺さったー。
ニーノ:イクル! イクル死んじゃうよ!
イクル:……えーっと、2ダメージと吸血の追加ダメージで[1D6-3]だよね。ええっ、……あ、ああっ……2……。
ルカ:こわいわあ。
イクル:危なかった……。って、ルカ1回も攻撃受けてないじゃん!
GM:こらこら喧嘩しないの。先攻取られると蚊でもこんなに強いんですよ。
ニーノ:ふうん。……イクル大丈夫? 生きてる?
イクル:も、ダメ……ボクもうだめ……
GM:ただ、悪しきものとは違って、普通の動物だから一発食らえば逃げて行きますよ。さ、次はそっちの攻撃です。
ルカ:誰から行く?
ニーノ:行く、ニーノから!
GM:ニーノから。何で来ますか?
ニーノ:えー、剣で。【勇気】+〈戦い〉かな。
イクル:あれ、GM、蚊は……?
GM:あ、蚊は飛んでるからダメですよ。近接武器のダメージは通らないから、【知恵】+〈狩り〉の飛び道具か、【愛情】+〈歌〉の歌の力でどうぞ。
ニーノ:お、おお。どっち が高いかな……、うん、【愛情】+〈歌〉だね。ダイス3つか。
GM:歌か。蚊のダイスプールはすごいぞ、3つしかない。……あっ、[2成功]!
ニーノ:……あ、う、うん、何から何まで一緒だ。

 ニーノが吹き始めた横笛の音色は神殿のなかに響き渡りました。しかし、なんということでしょう。それは一瞬にして蚊の凄まじい羽音によってかき消されてしまったのです。

イクル:相殺された!!!
ニーノ:蚊の癖に!
GM・ルカ:蚊の癖に、って。
イクル:ニーノに続いて、ボクも【愛情】+〈歌〉で行くよ!
GM:んー、……また[2成功]だ。
イクル:ボクのダイスは全部で7つ! これにかけるよ!
ルカ:イクルやっちまえ!
イクル:やれたかな? ――[3成功・2セット]!
ニーノ・ルカ:おお!
GM:1匹目の蚊が逃げるっていうか、【希望】が0になっちゃったからその場に倒れてしまった……。
イクル:落ちたーっ!
ルカ:イクル残酷だな……。

 蚊の出現から1時間程が経過し、苦戦しながらもイクルがリュートを使って弾き語りによって打ちのめされた仲間を見て、残りの2匹は尻尾を巻いて逃げて行きました。床に落ちた1匹の蚊と、羽音を響かせ遠ざかる2匹の蚊を見比べ、3人は武器をおろしてほっと息をつきました。

イクル:危なかったね。
GM:先攻取られるとこんなに強いんだねえ。
ルカ:イクル強かったな、ひとり気絶させるとか。
イクル:でももうダメ。


【第三章 ~遺跡の最奥~】

 廊下を明るく照らす天井の照明を頼りに、3人は長い長い廊下を進みました。廊下には蚊以外の動物も、罠も現れません。3人は少しずつ警戒心を解きながら、ついに廊下の突き当たりまで辿り着きました。小さなウタカゼたちにとってはとても長く、戦闘で体力を消耗してしまったこともあって、2時間近くもかかってしまいました。

GM:さて、遺跡の最奥には吹き抜けた部屋が1つだけ。ニーノが点けた明かりで照らされていた遺跡ですが、この部屋だけは古くなって崩れた岩の隙間から太陽光が差し込み、所々自然の光で明るく照らされています。ですが、この部屋が明るい理由はそれだけではないようです。
ルカ・イクル:む?
GM:部屋の一番奥。頑丈に作られた天井のせいで光すらも届かないその場所で、オレンジ色の小さな宝石がきらきらと輝いています。
ルカ:あれは?
イクル:なんだ?
ニーノ:お、きた!
GM:しかし今のところ、あなたたちとオレンジ色の光り輝く宝石の間には何もないように見えます。
ルカ:わーい、宝石だーっ!
ニーノ:こら、まだ早いって(ルカの襟元を引っ張る)。
ルカ:「ぐえっ」
GM:そう、「わーい宝石だ!」と言っても、この部屋はとても広いので移動するにはちょっと時間がかかりそうです。どれくらい進んだかを[1D6]で確認して行きましょう。スゴロクみたいな感じでね。
ニーノ:はいはい~。……誰が?
GM:さて、誰から行きますか?
ニーノ:1人ずつ?
GM:1人ずつ、進んでいいよ。
ニーノ:1人ずつ? バラバラなの?
イクル:「バラバラなの?」とニーノとルカを不安そうに見る。
ニーノ:(イクルを抱き締めつつ)全員で進むんじゃないの?
GM:1人ずつです。あとニーノはさっきからイクルにばかり構いすぎ、ルカが寂しがってるよ。
ルカ:べべべべつに羨ましいとか思ってねえし! (素の口調に戻って)あ、俺……5……!
ニーノ:お、おおっ ――あっ、……6……わーい!
イクル:あれ? あ、そこそこ、そこそこ。……5……。
ニーノ:みんなそこそこだね!
GM:そしてみんな仕掛けが一緒です。あなたたちの頭上の天井から岩が落ちてきた!
ルカ:え、うそ!
ニーノ:よ、避けなきゃ!
GM:罠が発動してしまい、岩が降ってきました。【知恵】+〈狩り〉を使って、あなたたちはこの岩を回避しなければいけません。
ルカ:うん、これは罠だねえ。
ニーノ:うん、無理だねえ。
イクル:落ち着いてるばやい?
ニーノ:うふふっ
イクル:あれ、【知恵】+〈狩り〉?
GM:そう、【知恵】+〈狩り〉。天井から岩が降ってきた!
イクル:どっちにしろ一緒だけど……。クリティカルコールで!
ニーノ:じゃああたしも、クリティカルコールしよう。
イクル:ダメだあ、これダメだあ失敗。
ニーノ:きたーっ! 成功!
ルカ:あっ!
GM:あっ?
ルカ:……222224……[5成功]した(笑)。
ニーノ:イクルだけ残ってる(笑)。
イクル:避けきれなかったー!
GM:失敗したイクルに岩が降りかかる! [1D6-3]でダメージを。
イクル:だっ ええっ!
ニーノ:イクルが死んじゃう!
イクル:あっ……2……!
ニーノ:そういえばイクル、今【希望】いくつ?
ルカ:2?
ニーノ:2? 回復する?
イクル:えーっと……。
ニーノ:イクル回復する? まだしなくていい?
イクル:え、え、これは……。
GM:まだ結構距離がありますよ。
イクル:えっと、岩でダメージは受けてない?
GM:ああ、岩でダメージは受けてない。イクルが奇跡的な回避能力を見せつけたので。
ニーノ:次に落とし穴とかに落ちたら死んじゃうよ!
イクル:だ、誰かボクに、【希望】を……。
GM:みんなまだ半分くらいしか進んでないですよ。
イクル:誰かボクに【希望】を! 死んじゃうー!
GM:誰かイクルを愛してあげて。
イクル:死んじゃうよー!
GM:早く! 誰か!
ニーノ:よし任せて!
イクル:死んじゃうー……え、あ、ありがとうっ!
ニーノ:えーっと、[友情値-1]でいいんだよね? ……4……!
GM:そうだね、それで。
イクル:「ボクはまだ戦える!」と意気込み、ぴょんぴょん跳ねる。
ニーノ:戻った? 頑張ってね。
ルカ:イクル良かったね。ぼくとイクルはさっきまで顔見知りだったからさあ。
ニーノ:仲間でしょ!
イクル:ちょっと、ルカひどいっ!
GM:さて、イクルが回復したところで、まだ宝石までの距離は遠く辿り着くまでにはもう少し時間がかかりそうです。このまま進みますか?
ニーノ・ルカ・イクル:進む!
GM:じゃあやっぱり[1D6]で進みましょう。
ルカ:あっ!
イクル:あ、……5……。
ルカ:ボクは……3……。ニーノは?
ニーノ:あたし、……1……。一歩しか進めない!
GM:ニーノの頭上にまた岩が降ってきた! 避けてください。
ニーノ:またか……! 避ける! ――と思ったけど、失敗~。
イクル:まずい、これはまずい。
GM:[1D6-3]でダメージを。
ニーノ:……5……あ、やっべ。あ、誰か回復して死んじゃう!
ルカ:また裏ニーノが出てるよ。
イクル:裏ニーノがきた。

 降ってきた岩を避けきれず、痛みに顔を歪めたニーノが思わず悪態をつくと、ルカとイクルは顔を見合わせ含み笑った。ダメージを受けるとついつい本音が漏れるニーノを見ると、緊張や恐怖が吹っ飛んでしまうのだ。

GM:ニーノは避けきれなかった! [2ダメージ]ね。
イクル:じゃあさっきのお返しに、今度はボクが回復させてあげるよ。
ニーノ:ほんと?
イクル:うん。
ニーノ:……6……あ、よかったありがとイクル!
GM:さて、それじゃあニーノより先へ進んだルカの目の前には大きな亀裂が走っていました。【勇気】+〈冒険〉を使って飛び越えなければいけません。
ルカ:らっくしょう!
GM:[難易度2]ね。
イクル:[2成功]以上出さないとダメだから、楽勝じゃないよっ
ルカ:――……3366……[2成功・2セット]!
ニーノ:すごい! 本当に楽勝だったね!
ルカ:だろ? 楽勝だぜ!

 ルカが床に走る大きな亀裂をいとも簡単に飛び越え、走り出しました。しかしそんなルカをイクルがゆっくりとした歩みで追い越して行きます。

GM:さて、イクルが立ち止まると壁からカチッと音が鳴り、空気の塊が飛んできた!
ルカ:空気砲?
ニーノ:空気砲って……! 大きな人たちは何をしたかったの?

 思いもしなかった罠にニーノとルカはお腹を抱えて笑い出しました。危機が迫っているイクルのことなんてお構いなしです。

GM:ひいひいしてる2人は放っておいて、イクルは【知恵】+〈狩り〉で避けてください。
イクル:まずい、クリティカルコールで!
ルカ:「イクル避けろ!」と一応叫んであげる。
イクル:失敗!
GM:[1D6-4]!
イクル:……6……何故……!!!!!
ルカ:むしろこっちが何故だよ。
イクル:あばらが2、3本と言ったところか……。
ルカ:空気砲で?
ニーノ:ぼふっでダメージ食らってるからね。
ルカ:大分吹っ飛ばされたんじゃない?

 空気砲の罠に引っかかり、軽く飛ばされたイクルが立ち上がって前を見るとそこには祭壇の上に光り輝くオレンジ色の宝石が置かれています。それは手を伸ばせば届きそうな程近くに感じました。

ニーノ:おっ。
イクル:やっとここまで……。
GM:しかし、まだ辿り着けてはいません。
イクル:まだなの?
ルカ:イクル早く行って!
ニーノ:遠いなあ。
イクル:えっと、じゃあ、宝石まで一気に頑張る!
GM:頑張る? ならまた[1D6]で進んでみて。
イクル:……1……。
GM:残念! またぼふっ!
ニーノ:遠くから音だけ聞き取って「イクルー!!!」と叫んでいる。
GM:ごめん、そんな感じで。
イクル:え?! また空気砲?
ルカ:「だからそっちには罠があるって言っただろ!」と安全なところで笑いながら。
イクル:え、え、じゃあクリティカルコールで――失敗!
ルカ:え、また? イクルマジ面白いな。
GM:2度目の空気砲が発動しました! 今度こそ避けてください。
イクル:……6……!
ルカ:ここでそれか(笑)。
イクル:も、もダメ……。
GM:一応まだ優しい方なんだけど、なんでそんなにサイコロ運悪いの?
イクル:(素の口調に戻って)出るんだよ、俺は。出るんだよ……。
GM:さて、再び空気砲の罠にはまってしまったイクルを助けに行きますか?
ニーノ:愛するイクルのためなら!
GM:どんどんニーノが壊れていく……。じゃあ[1D6]で。
ニーノ・ルカ:……4……!
GM:4? あっ、ルカが宝石の前に到着した!
ルカ:あ、やった!
ニーノ:マジで? あたし全然進んでない……。

 何度目かの空気砲をその身に受け、膝をつくイクルを通り越して、ルカが光り輝く宝石の前に辿り着きました。すると最奥の部屋にあったすべての仕掛けは止まり、ニーノはイクルに駆け寄りました。

GM:えー、じゃあえっと、あなたたちは全員でその場に立ち、オレンジ色に輝く宝石を手に入れます。
ルカ:「2人とも早くきなよ!」と後ろに向かって手を振る。
GM:この宝石こそが、村長が言っていたアイテムなのでしょう。
ニーノ:(ぜえぜえと息をしながら)それが「希望の宝石」? 随分小さいんだね、手の平くらいしかないよ。
イクル:きっとそうだよ。だって、ほら……!

 ニーノとイクルがルカの持つ宝石に触れると、ルカを中心としてオレンジ色の光があたり一面を照らしました。その強烈な光に目を瞑る3人、しかしそれは暖かく、まるで全てを包み込むような癒しの光でした。

GM:その光を浴びた全てのプレイヤーは【希望】が全回復します。
ルカ:おお? なんだこれ。
ニーノ:わーい! でも元々全回復してるんだよね。
ルカ:ぼくもだ。
イクル:はふー 良かったー
ニーノ:よかったね、生き返ったね。
GM:これが「希望の宝石」の持っている力なのでしょう。オレンジ色の光が収まると、遺跡の壁の一部が動き出し、外へと繋がる道が生まれてきます。
イクル:「やっと帰れるね!」と疲れも忘れてぴょんぴょん跳ねる。
ニーノ:早く村に戻ろ! もう疲れた!
ルカ:疲れたって(笑)。あと少しだから頑張ろうよ!
ニーノ:頑張る! だからほら、2人ともダッシュで村に戻るよ!!!
ルカ:ちょ、ここから?!
イクル:ボクもう走りたくない~。
ニーノ:「ダメ! ダッシュで帰るよ!」と2人の手を引っ張り、全力で走り出す。

 3人は「希望の宝石」を手に、自分たちの帰りを待っているダハの村の人たちを思い出し、疲れさえも忘れて村へと続く道を駆けて行きました。

〈おしまい〉