【プロローグ　～事の始まり～】

　草原と森に囲まれた一本道の中に、横転したウサギ車が。そして周りには荷物の壺が割られています。中身のハチミツは綺麗さっぱりなくなっているようです。
　荷物を運んでいたウタカゼたちは悔しそうに言います。
「またやられた、プゥの仕業だ……！　この道を通れば、いつもプゥにハチミツを盗られてしまう！　でもプゥは悪いやつじゃないんだけどなぁ」
　そして彼らはウタカゼの本拠地である、歌風の龍樹に泣く泣く戻っていきます。

GM：今回のシナリオのあらすじはこんなところです。それではセッションを開始したいと思います。
ニーノ・ルカ・イクル：はーい。
GM：さて、今回は私が即興でシナリオを作りながらプレイしていきます。タイトルは、そうですね……。

プゥのハニーハント

イクル：なんだか、どこかで聞いたことあるような名前だよ？
ルカ：セーフ……。うん。セーフだと思うけど。どうなんだ？
GM：大丈夫、セーフですよ。いいですか、始めますよ？
ニーノ：わかりました。二人とも、さっさと準備して。
ルカ：準備ならとっくにできてるよ。イクルは？
イクル：もうちょっと待ってー。
ニーノ・ルカ：（溜め息を吐いて）イクル～！
GM：なんだか先が不安なパーティですが、まぁ始めていきましょう。あまり時間もないですしね。
イクル：サクサク行こうー。
ルカ：（イクルが一番サクサク行かない気がする……）
GM：……さて。（地図を広げて）あらすじで起こった事件は、ウタカゼたちの本拠地、歌風の龍樹と、その南の方角にあるティトの村へ続く道で起こりました。さっきのウタカゼたちはこのティトの村へ食糧を送るためにウサギ車で移動していたんですね。
イクル：あ、もう始まってます？
GM：はい、始まってます。まだ皆さんは登場しないのですが。……そして、荷物の送り先である、このティトの村は長い干ばつが続いて、とても飢えた、つまり食料が足りない状態にあります。
ニーノ：でも、そこをプゥに襲われてしまったんですよね。
GM：そうです。いくらウタカゼが強くても、裏をかかれてしまい、プゥにハニーハントされてしまうわけです。
ルカ：それじゃあ食糧が届かないってことじゃないか。
GM：ええそうです、食料が届かないんです。赤ちゃんなんかはね、ハチミツがないと厳しいんですよ。子どもも泣いてる、お母さんもね子どもたちの誕生日なのにハチミツのクッキーが焼けないと……。泣いているわけです。（泣いているフリ）
イクル：それは可哀そうだよ～。
GM：それでこの村は干ばつも続いて、蜂もみんな死んでしまったのね。だからハチミツが欲しいのに、プゥがハントしてしまうから……。話を聞くと、プゥは悪いやつじゃないんです。ただハチミツがだーいすきなだけです。
ルカ：悪いやつじゃないって、そこは強調するんだね……。どう考えても悪いやつにしか聞こえないけど。もしかしたら悪意に憑りつかれているんじゃ？
イクル：きっとおなかが空いてただけなんだよ。悪いやつじゃないってみんな言ってるんだし。
ニーノ：それはまだわからないわよ。話の続きを聞きましょ。
GM：……食料も届けなくちゃいけない。ハチミツも届けなきゃいけない。ということで、また新しい輸送使節団をつくるために、ウタカゼの師は、あなたたち三人を呼び出したわけです。
ニーノ：ようやくあたしたちの出番ってわけね。

【第一章　～食糧集めも楽じゃないよ～】

GM：さて、あなたたち三人は今回、いつものウタカゼの師フィノにではなく、ウタカゼの師クライド（→ミニノベル『風に運ばれて』）に呼び出されます。クライド師は“悪しきもの”ではないものの、ほかの生き物に危害をくわえそうな動物たちをまとめて記載した『食いしん坊さんデータブック』の著者であり、尊敬できるウタカゼの師です。あなたたちが集まると、クライド師はとても深刻そうな表情でさきほどの輸送使節団の話をしました。
クライド師（GM）：「さて、話はそういうことだ。ティトの村に食糧を送ってほしい。ティトの村は食料も足りなくなっていて、とても危険だ。だがこの途中にはツキノワグマのプゥがいてだな……」
ルカ：ツキノワグマ!?　プゥってそんなにおっかないやつなのか。
クライド師（GM）：「だけど根はやさしくて悪いやつじゃないんだ、ハチミツが大好きなだけでな……」
ニーノ：（話が終わらないうちに）手を上げて、「大丈夫です、私行きます！　食糧を持っていきます！」と張り切って言います。
クライド師（GM）：元気がいいですね。「おおっ、行ってくれるか！」と師も喜びます。
ニーノ：「行けますよ、任せてください！」とものすごく自信満々です。
クライド師（GM）：「そうか。プゥは悪いやつじゃないんだ。一回、鼻の先にコツンとすれば逃げていくはずだが……」
イクル：悪いやつじゃないって、何度も聞いてるような……。
クライド師（GM）：（咳払いをして）「そういうわけだから、まずは食料を集めてきてほしいんだ。畑で果実を、巣箱でハチミツを。それから川で魚を採ってきてほしい」
ニーノ：ウサギ車で進みながら調達しに行ってもいいんですか？
クライド師（GM）：「いや、まず調達してきてからウサギ車で出発するという形だ。三人で手分けして、夕方までに探してきてほしい」
ニーノ・ルカ・イクル：「はーい！」
GM：そうして師から任された三人は食糧調達のため、歌風の龍樹の近くの森へと向かいました。そこでなにを採ってくるのかを話し合うことにします。
ニーノ：「じゃあ誰がなにを採ってくるか決めましょう！」とやる気は十分です。
GM：頼もしいですね。ですが急いでくださいよ、子どもたちがハチミツを待っている。あと、おいしい魚も、おいしい果物も。……果物はなにがいいですか？
ルカ：んー、リンゴとかどうかな。
GM：……リンゴは殺人兵器だ、大きすぎるよ！
ルカ：あー、そっか。僕たちとリンゴは同じくらいの大きさだっけ。これじゃあ食べきれないか……。
ニーノ：じゃあサクランボとかどうですか？　それと野イチゴとかも。
GM：サクランボに野イチゴですか、可愛いですね。それならいいでしょう、山ほど摘んでほしい。……だがな、サクランボと野イチゴもプゥの大好物なんだぁ。
ニーノ・ルカ：なんだってー！
イクル：もしかして、魚もプゥの好物だったりするのかなぁ？
GM：おおっと、そこに気付くとはなかなかやるな。……さぁさぁそれで、誰がなにを採ってくるかな？
ニーノ：それじゃあ私がサクランボ採ってきます。
GM：ほう。じゃあイクル、君はなににするかな？
イクル：ボクは魚にするかな。
GM：魚釣りか……。想像してみたまえ、釣りには力がいる。一番力の弱い君が、果たして釣竿を維持できるかな？　もしブラックバスが釣れてしまったら、（竿を引く真似をしながら）うわあああああってなったりするんじゃないかな？　
イクル：うーん、ちょっと無理そうだよね。
GM：ハチミツ採りの方がいいんじゃないかな？　君は心話で蜂と会話できるだろう？
イクル：ああ、そうかー。じゃあそっちの方が向いてるよね。
GM：ただし、失敗したときは……。ふふふふ（笑顔）
ルカ：なんだこのGM、怖いな……。だがそこはイクルを信じるしかないね。
GM：というわけで残った君が魚釣りというわけだ。いいね？
ルカ：はい、任せてくださいよ。
GM：そして忘れてるかもしれないが、イクルの歌は魚には効かないよ？
イクル：あっ。
GM：適材適所というやつだ。
ニーノ・ルカ：あはははは（笑）。
GM：それじゃ始めよう。まずニーノが先に飛び出し、果物の生った木の前にやってきます。……さて、君の【勇気】＋〈冒険〉の値はいくつかな？
ニーノ：えーと、【勇気】の数が5つで〈冒険〉は無いから、ダイスプールは5つです。
GM：じゃあ、三回連続成功で、木に登れたことにしましょう。どうぞ。
ニーノ：はーい。……３３４２２……。３が2つ、２が2つだから、［2成功・2セット］
GM：おお、いいですよ。ニーノは順調に木を登り始めます。
ニーノ：よし、二回目。……１２３４５……失敗。嘘でしょ!?
GM：ああっと綺麗に同じ出目が出ませんでしたね。……ニーノは少し気を抜いた途端、手を滑らせて落ちてしまいす。ずるずると落ちてます。
ニーノ：「きゃあああ、落ちるー！」振り直します！　リロール、リロールです！　
GM：リロールしますか、では【希望】を1つ消費してから、もう一度振ってください。
ニーノ：わかりました。【希望6→5】……１２３３４……［2成功］。ああ、なんとかなった。
GM：なんとか途中でしがみついて持ち直しましたよ。……ですがあともう1つ判定がありますね。
ニーノ：今度は失敗しないわ。……３１４５５……［2成功］。よーし！
GM：では、無事木に登れたニーノは、果物をたくさん採り、木箱の中に果物を山ほど詰みました。
ニーノ：よし、「私はやりきった！」と満足気に言います。次は誰の番ですか？
GM：そうですね、次は魚釣りのほうに行きましょう。
ルカ：よし、今度は僕の番だね。ニーノには負けられないよ。
GM：意気込みはいいですねー。ルカは森に流れる大きな川へとやってきます。たくさんの魚が泳いでいるのが川の外からでも見えるくらいです。……さぁそれでまず、どの魚を狙いますか？
ルカ：ここはアユ辺りが丁度いいんじゃないかな。
GM：アユですかー。アユ難しいですよ？
ルカ：えっ？　じゃあどうしよう。失敗したら困るからな。
GM：じゃあ適当に投げてみますか。［1D6］を振ってください。
ルカ：よぉし。……６が出たぞ。なんだかよさそうな出目だ。
GM：ほう、６ですか……。ルカが勢いよく釣り糸を川へと投げこむと、おおっ、すぐに反応がありましたよ。強い引きです！　それでは【勇気】＋〈冒険〉で振ってください。これは三回までチャレンジできます。
ルカ：【勇気】＋〈冒険〉だね。僕の場合は【勇気】が3つで〈冒険〉はないから、ダイスプールは3つと心細いけど。……３１３……［2成功］。おっ、成功したぞ！
GM：成功しましたか。というわけで、ヒットしました！　その魚は……なんと最大の川魚、ブラックバスだぁー！
ルカ：「うわあああああ！　やっちゃったあああああ！」（パニック！）
GM：（盛り上がってきたなぁ。）はい、ではブラックバスを釣ってください！　【知恵】＋〈狩り〉でどうぞ。
ルカ：それなら得意分野だね。ダイスプールは6！　……６６１３２２［2成功・2セット］。まぁ妥当なところかな。
GM：ではこちらが振って、勝てば釣れます。二度負けてしまうと逃げられてしまいますので。こちらのダイスプールは4。……５５５５……［4成功］。おっとこれは。
ルカ：え、なんだその出目は……。GM、ちょっと運ありすぎじゃない？　だけどもう一度チャンスはある。……２２３３１１……［2成功・3セット］。これならどうだ！
GM：……６６６３……［3成功］。返り討ちですね（笑）。
ルカ：なんだとおおおお！
GM：さてルカのことは一旦置いておきましょう。ハチミツ採りに向かったイクルの番です。
イクル：はーい。「蜂さん、蜜をわけてください」と蜂たちに向かって話しかけます。
GM：蜂はブーンと、あなたを睨んでますよ。針を出し入れしていますね。……というか普通に話してもダメでしょうに。
イクル：あ、そっかー。じゃあ〈心話〉で交渉してみるよ。
GM：それでは【愛情】＋〈心話〉でお願いします。あなたのダイスプールは7ですね。
イクル：うまくいきますように。……４４４５５２３……［3成功・2セット］。うーん、どうなるかな？
GM：おおっ、どうやら蜂はあなたにハチミツを採って欲しいみたいですね。
イクル：わぁい。「蜂さんありがとう～。ありがたく貰っていくね」
GM：そしてイクルはハチミツをたっぷりと採り、ハチたちに別れを告げて戻っていきます。これでニーノとイクルは調達が終わりましたね。二人は合流します。
ニーノ：「あ、イクルお帰り―。そっちも上手くいったみたいね」と先に戻っていたニーノは気づいて、手を振ります。
イクル：重たそうにハチミツを運んで、「ただいま～。ニーノもたくさん採ったんだね」……ルカはどうなったんですか？
GM：さて、二人はルカがなかなか帰ってこないことに気づきます。……では、さっそく二人は【知恵】＋〈感覚〉で振ってみてください。
ニーノ：【知恵】＋〈感覚〉ですか。……ってダイスプール2つしかないっ!?
イクル：うわっ、僕もだ！　でもまぁいいか。
ニーノ：よくないから！
GM：いいから早く振りましょうよ……。後が控えてるんだから。
ニーノ：少ないから、ここはクリティカルコールよ。私の龍のダイスは歌。だから６が出れば成功ね。それっ、……４……失敗。あれ？
イクル：じゃあ僕もクリティカルコールだよ。僕のは３を出せばいいんだね。……５……失敗。うーん、ダメだったか。
GM：あら残念。遠くから、「助けてくれー」というルカの声は誰も聞こえませんでした。さぁ、必死にブラックバスと闘っているルカは、まだ一人で頑張らなければいけません。
ルカ：「うわぁ、誰も気づいてくれないのか」と焦りながらも踏ん張り続けます。……というかよりによってみんなのダイスプールが低いなんて。
GM：こういうこともありますよ、さぁあなたは【勇気】＋〈冒険〉で振ってください。
ルカ：うわぁ、プールは4つか。……［2成功］。
GM：おお、［2成功］ですか。まだ持ちこたえてますね。頑張りますね。竿を放せば助かるかもしれませんよ？　諦めますか？
ルカ：「いいや、ここで放すわけにはいかないんだっ！」さらに力強く踏ん張ります！
GM：ブラックバスも負けていませんからね、このままでは今度こそ耐えきれなくなってしまいますよ？　どうしますか？　どのような行動をしますか？
ルカ：どのような……って言ってもね。
GM：今このような状態ですよ？　うわぁーっていう感じで（釣竿を精一杯引くような真似をしている）。そして、すごいバチャバチャ水が音を立ててますよ？　辺りに水しぶきも飛び散っていますね。
ニーノ：「今何か水の音が聞こえたけど、気のせいかな？」と首をかしげてみます。でも全然気づきませんからね！
GM：さあ、さぁどうしますかルカ？
ルカ：なるほど音か。よし、じゃあ大声で叫んでみるとか。
GM：ほう、それはいいアイデアかもしれませんね。ふむ、では【愛情】＋〈説得〉で振ってください。
ルカ：ダイスプールは2つか……。「みんな、助けてくれよ！」と叫びます！　……失敗。やっぱだめだー。
GM：あー、ルカの渾身の叫びにも、みんな気づきませんね。仕方ない、少し助け船を出してあげましょう。ニーノとイクルは、【知恵】＋〈感覚〉で振ってください。って、また二人ともダイスプールが少ないですね……。
ニーノ：そんなのどうにだって！……失敗。あれ、失敗!?
イクル：僕の方は、……［2成功］。あ、成功しました！　「ん、なんだかすごい音が聞こえるよ？」と川の方を覗いてみます。
GM：お、成功しましたかよかったですねルカ。イクルが川の方でバスに苦戦しているルカに気付きましたよ！
イクル：「あ、あれってルカじゃないの？」と慌ててニーノを呼びます。
ニーノ：それに気づいて、「え、ルカ？　あっほんとだ！　すごいバチャバチャ水が飛び散ってる！」慌ててイクルと一緒にルカのそばへ向かいます。
ルカ：「うおおおおおおおおおっ！」と精一杯竿を引っ張ってる！
GM：やってきた二人は、ルカとブラックバスが闘っているのに気づいて驚きます。しかもルカの方がどんどん川の方に引きずられちゃってます。
ニーノ・イクル：「る、ルカぁぁー！」
GM：はい、では引き揚げましょう。……ではまず、誰かがルカを掴まなければならないですね。
ニーノ：あ、じゃあ私がルカを掴みます！
GM：はい、では【勇気】＋〈冒険〉の判定でどうぞ！
ニーノ：「ルカ、大丈夫―!?」　ジャラジャラジャラ……（ダイスをうっかり落っことす）あ、しまった……。
ルカ：お前が大丈夫か!?
GM：イクル：あはははは！（大爆笑）
ニーノ：ちょっとGMもイクルも、そんなに笑わないでよ！　ええい！（気を取り直してダイスを振る）……［2成功・2セット］
GM：おお、どうやら成功のようですね。さぁ、ニーノがルカの体を掴みましたよ！　そして『おおきなかぶ』のように、ルカの体をニーノが掴み、ニーノの体をイクルが掴みます。さぁ三人で協力判定です。……【勇気】だけで、振ってください。ブラックバスとの勝負です。
ニーノ・ルカ・イクル：せーの！　……［3成功・2セット］
ニーノ：三人で振れば［3成功］くらい楽勝だよ。
GM：ブラックバスのダイスプールは5つ。まだどうなるかはわかりませんよ。……［2成功］。おやぁ？　失敗だぁ。
ニーノ・ルカ・イクル：あはははは！
GM：では、なんとか、三人の力を1つにして、苦労しながらブラックバスを釣り上げましたよ！
ルカ：「おぉ、ありがとうみんな！　一人じゃ危なかったんだ」喜びながらにお礼を言います。
ニーノ：溜め息を吐いて、「ルカ大丈夫だった？　あんまり心配させないでよね」
イクル：でも無事に釣れてよかったね～
GM：なんと60センチほどのビッグフィッシュです！
ルカ：うわぁ、でかすぎる！　これだけあれば、満足するだろう！
ニーノ：ふふっ、そうね。「じゃあ早いとこ村に持って行ってあげましょう」
イクル：「そうだねー。おなか空いちゃうもんね」……ぐ～、とお腹が鳴ります。
ニーノ・ルカ：「お前の腹が鳴るんかい！」


【第二章　～さぁ出発だ？～】

GM：三人は無事にそれぞれの食糧を採ることに成功し、約束の夕方ごろよりも早くに、歌風の龍樹へと帰って来れました。龍樹では他のウタカゼたちが、彼らの採ってきた果物やハチミツ、そしてブラックバスを、おいしそうだという目で見ています。特にブラックバスを釣り上げたことには感心する者もいて、「彼らなら輸送使節団を任せられる」と認めています。
ニーノ：「私たちにかかればこれくらいどうってことないわ！」とウタカゼたちに強くアピールします。……本当はちょっと危なかったけど。
クライド師（GM）：ははは……。「よくやりましたね三人とも。まだ陽も沈んでいませんし、このまま出発してもらいましょうか」そう言って、ウサギ車を一台用意します。「これに荷物を積んで運んでいくのです」
ニーノ：「わかりました師匠！　私たちやってみせますよ！」
ルカ：でもこれって、全部積みあがらないんじゃ……（ブラックバスを見ながら）。
クライド師（GM）：「なめてもらって困りますね」と無理やりつめこみます。……果物、ドン！　ハチミツ、ドン！　ブラックバス、ドドン！　「はい、積みあがりましたよ」少し自慢げです。
ルカ：すごいな、ウサギ車……もとい師匠。
GM：はいそれでは、ウサギ車を運転する人を、一人決めましょう。これは【勇気】＋〈騎乗〉の数値が一番高い人がいいかもしれませんね。
ニーノ：それだったら、私が運転しましょう。
GM：ニーノの〈騎乗〉はそして、横で護衛につくウサギに乗る人が、二人必要です。
イクル：それじゃあ僕とルカが護衛だね。
GM：決まったところで、ウサギに乗り込みましょう。【勇気】＋〈騎乗〉の判定で振ってください。
ニーノ：それじゃあまずは私から行きます。ダイスの数は6つね。……［4成功］。おおっ！「よーしウサギさん、出発よー！」
GM：ほう。……ニーノのウサギは勢いよく走り出しました！
ルカ：「え、ちょっと待ってよ。早い早い！」走り出すニーノのウサギを目で追いながら。……ボクらまだ乗ってないのに。
イクル：「やっぱりウサギさんは足が速いねー」
ルカ：「そんなところで感心してる場合じゃないだろイクル」とイクルの天然ボケ具合に呆れる。
GM：さぁさぁ、二人も追いかけるためにウサギに乗りましょう。【勇気】＋〈騎乗〉で振ってください。
イクル：ダイスプールは2かぁ。じゃあクリティカルコールしま～す。……失敗。あれー、失敗？　「ウサギさん、動いてくださーい」
ルカ：僕のプールは3だけど、クリティカルコールはしないよ。……［3成功］。おお、やったぞ！　「ニーノ、待ってってば！」
GM：（笑いながら）ルカのウサギも勢いよく走りだしましたが、イクルのウサギは草を食み始めましたね。イクルだけ置いて行かれましたよ。
ニーノ：「あれー、イクル？　イクルは？」
ルカ：「え、イクルだけ来てない!?　イクルゥ―！」とまだ動かないイクルに向かって叫ぶ。
GM：さぁ置いて行かれたイクル、どうしますか？
イクル：んーと、ウサギさんに〈心話〉でお願いすることってできるのかな？
GM：はい、できますよ。
イクル：じゃあウサギさんは、動いてくれるかな？　……［3成功］。「ウサギさんお願い、走ってください！」
GM：ふむ。イクルのウサギもようやく動き始めました。
イクル：よかったー。「二人とも、待ってよー！」と慌てた様子で叫ぶ。
ニーノ：「ああよかった、イクルもついてきてるのね。安心安心」イクルがついてきてホッとする。
GM：あ、そうそう。三人とも出発したところで、ウタカゼの師からの注意、というか伝言です。
ルカ：（こんなときに伝言って……）
クライド師（GM）：「プゥはできるだけ避けて通るように。プゥの気配に気づいたらその道を外れること。まともに戦っても、あなたたちの力じゃプゥには勝てないからね」
ニーノ・ルカ・イクル：（三人とも苦笑している）
クライド師（GM）：（ちょっともったいぶってから）「プゥは一撃で木をへし折る……」
ニーノ・ルカ・イクル：「なんだってー！」
クライド師（GM）：（あ、しまった）「という、か、可愛い獣なのです……」と怖がらせないように言い直します。
ニーノ：かわいい!?　それって可愛いんですか？
イクル：そんなのかわいくないよ～。
ルカ：「というか師匠、なんでちょっとごまかし気味なんですかー！」とツッコんでみる。
クライド師（GM）：「そそそそんなことないですよ。それではあなたちの働きに期待しています。これは試練なのです」
ニーノ：ま、丸投げだー！
クライド師（GM）：「丸投げとは失礼ですね……。いいですか、万が一プゥに出会ってしまったら、鼻の先をちょっと強めにコツンと突いてやるといいでしょう。そうすれば逃げていくはずですから」と、ここで師からの伝言はおしまいです。
ニーノ：あ、はい。ありがとうございます。
GM：さて師からのありがた伝言は役に立ちましたかね？　みなさんは今、森の中を進んでいます。師匠からの注意があったわけですが、先に進みますか？
ニーノ：はい、進みます。進まなきゃゲームになりませんからね。
ルカ：あ、しつもーん！　プゥ以外の動物は倒せるレベルなんですか？
GM：はい。プゥがちょっと強いくらいで、他の動物は普通ですよ。……ただ、倒してしまうというより、大人しくさせるといったほうが正しいでしょうね。そもそもこの世界には『倒す』というような物騒なことはありませんよ。
ルカ：ふむふむ。やさしい世界観だね。
GM：そういうことです。……では話を戻して、【知恵】を振ってください。代表者一人が。
ニーノ：ルカお願い、私のプールは2つしかないのよ！
イクル：あー、僕も2つしかないんだね。ここはルカに任せましたー。
ルカ：知恵は得意分野だ！　……［2成功］。あれ、あんまりよくない出目だね。
GM：［2成功］でしたか。ふむ、ではしばらく進み、一時間くらい経ったところでしょうか、道の途中、何本かの木が傾いているのを見つけましたよ。
ニーノ：おや？　嫌な予感が。
イクル：「木が曲がってるよ。これは、もしかして……」と少し怯えながら。
ルカ：根拠はないけれど、「プゥの仕業だな！」（自信満々）
GM：そう思って見てみますか？　見てみましょう。その木の表面は、カギヅメでガリガリ削られていて、まるでプゥが楽しそうに遊んでいたあとのようです。
ニーノ：嫌な予感！
イクル：……こわい、こわいよぉ。
GM：プゥは、遊ぶのもだーいすきなんだよ！
ルカ：……ちょっとプゥのやつ、フリーダムすぎないか。
GM：ははは。ちなみに［3成功］以上だと、どれくらい前にプゥがいたかがわかったんですけどね。……さて、確実にプゥがこの辺りにいたんでしょう。
イクル：こわいなぁ。
ニーノ：［3成功］はさすがに……。
ルカ：出にくいからなぁ……。
GM：まぁ、進んで行きますか？　プゥがどこにいるかはわからないけれど。
イクル：うーん、こわいけど進もうかぁ。
ニーノ：ここで怯えてても仕方ないしね。


【第三章　～「あれは紛れもなく奴だ」～】

GM：それから三人は順調になにごともなく、怪しいくらいに平和に進んで行きました。森を抜けて広い草原に出ると、辺りは夕焼け空が広がり、少しずつ陽も傾いているのに気づきます。あれから結構な時間が経ったのでしょうね。鈴虫の鳴く声が、りーんりーんと草むらから響いています。
ルカ：そろそろ夜が来るのか。
GM：あ、そうそう。プゥは夜更かしさんでもありますよ。
ニーノ：なんでそういうことは早く言わないのよ！
GM：いやぁ、すっかり忘れていました。……さて、進んで行きますか？
ニーノ：進んで行きます。進まないでどうしろっていうんですか。
GM：すると！
イクル：へっ？
ニーノ：こ、今度はなに!?
ルカ：ああ、周囲に気を配っておけばよかったんだ。
GM：しーん。……鈴虫の鳴き声がやみました。
ニーノ・ルカ：こ、こえ～！
イクル：なにか、小さな音とか聞こえないの？
GM：訊いてみますか？　では全員で【知恵】＋〈感覚〉を振ってください。
ニーノ：相変わらずダイスプールが少ないから、クリティカルコール！　……失敗。あらら。「私にはなにも聞こえないわ」
イクル：僕もクリティカルコールするよ。……失敗。「んー、なにか変わったことでもあった？」と状況をよく理解出来ていない。
ルカ：「知恵ならボクに任せてよ！」……１２３４５……失敗。え、え？
GM：一人でも成功していれば、音を判別しどこから聞こえてくるのかがわかります。
ニーノ：え、ルカ失敗？　任せてとか言ってたくせに？
ルカ：仕方ないだろ、こういうときもあるって。
GM：リロールできますよ？
ルカ：じゃあリロールするよ。【希望6→5】
GM：なんだか名状しがたいあのゲーム的な雰囲気ですね。
ルカ：なんでホラーになってるんだよ、それっ。……［2成功］。おっ、よかった！
GM：［2成功］？　音がどこから聞こえてくるかわかりますね。……ガサガサと後ろから。
ルカ：「む、これは……、後ろから来るぞ、気を付けろ！」と二人に叫ぶ。
イクル：「え、うしろ～？」言われた通りにウサギ車の後方へ振り返る。
GM：なにかが鼻をひくつかせている音が聞こえてきます。
イクル：ひぃ！　「二人とも、逃げようよ！」
GM：じゃあ逃げますか？　ではウサギ車でダッシュしてください！　……または誰かが囮になるとか。
ルカ：お、囮だってー？
ニーノ：私は荷物があるからそれは無理ね。
ルカ：みんな、ここはボクに任せて早くいけー！（冗談）
ニーノ：ええええ!?
イクル：じゃあここはブラックバスを餌にすれば……。
ニーノ：いやいやいや！　普通に逃げようよ！
GM：（まとまらないなぁ）じゃあダッシュをします。ウサギの判定に行きましょう。まず【勇気】＋〈騎乗〉を振ってください。成功すれば走り出せますよ。
ニーノ：よーし、……［3成功・2セット］！　これなら、余裕ね。「ウサギさん、急いで！」
イクル：GMさん、〈心話〉じゃあだめかな？　出発のときと同じみたいに。
GM：うん、心話でもいいよ。
イクル：わぁい。ウサギさん、頑張って。ゴー！　……［2成功・2セット］。成功したよ。「はやく逃げてウサギさんー！」と必死に呼びかけてます。
ルカ：ダイス少ないけど、どうにかなるだろう。……失敗。「おーい！　こんなところで遅れちゃだめだよ！」
GM：一人だけ失敗ですか……。リロールすることもできますよ？
ルカ：リロールは……、しなくていいや。
GM：（えっ、しないの？）……えーと、ルカが遅れましたよー！
ニーノ：ルカぁ？　なにやってんのよー！
GM：さぁ、二人はどうします？　このままルカを見捨てますか？
ニーノ：「私は荷台があるからうかつに行動できないのよ！」とイクルの方を見る。
ルカ：じゃあ仕方ない、ここはボクが囮になって……。
イクル：（ルカを無視して）ニーノの視線に気づいて、「わかったよニーノ。僕がなんとか助けてみせるよ！」……助けるにはどうしたらいいかな？
GM：うーん、じゃあ〈心話〉でルカのウサギに呼びかけてみましょうか。
イクル：わかりましたぁ。「ウサギさん、気付いて―！」　……［2成功］です！
GM：ふむ。ルカのウサギは気づいたようですよ！　そしてルカのウサギも走り出します。ちょっと遅れましたね。
ルカ：「ふぅー。ありがとうイクル！」すごく冷や汗をかきながら。
GM：さぁ、三人は後ろから迫ってくるなにかから、もうダッシュで逃げます。（わざとらしく）あれは一体なんなんでしょうねぇ？（そして、なんだか鼻歌まじりでダイスを取り出す）
ニーノ：なにそれ、怖いわよ。
GM：これはプゥさんのハニーハントだから、こわくないよー。（ダイスを振る）……失敗。ふむ。ウサギ車を追いかけていた気配は遠のいていきます。助かりそうです。
イクル：あー、なんとかなりそうだね。
GM：と、なんと前をみると、見れば見るほど穴だらけ。地面に小さな穴がたくさんあいている、こんなときになんてタイミングだ！　これはモグラ族のいたずらに違いない！
ニーノ：ちょっとGM、なんでそんな意地悪なイベントを！
GM：だってあっさり進んだらゲームとして面白くないでしょ。……さぁこの状況をどうしようか。このまま真っ直ぐ進むと、ウサギたちは穴にはまってしまいますよ？
ルカ：でも、ウサギなら飛び越えられるんじゃないかな。
GM：飛び越えますか。……では、まず【勇気】＋〈騎乗〉で振ってください。
ニーノ：頼んだよウサギさん！　……［2成功］です！　「ジャンプよウサギさん！　もぐらたちの穴になんか負けないで！」とウサギを激励する。
ルカ：ダイス数少ない。なんかダメな気がする。……失敗。これはまずい！
イクル：じゃあクリティカルコールします。……失敗。うわぁ、大変だ！
GM：リロールしませんかぁ？
ルカ：リロールするか。【希望5→6】クリティカルコールで今度こそ、……失敗。そんなまさか。
イクル：僕もリロールするよ。【希望6→5】クリティカルコールで、えいっ！　……失敗。あれれ……。
GM：なんと運の悪い……。失敗したらウサギから落ちてダメージを受けてしまいますからね。まぁそれはまた後でやりましょう。そして、成功した人は、ウサギの【勇気】＋〈冒険〉で三回成功させなければいけません。
ニーノ：さ、三回も……。ええい一回目、……成功。お、二回目いくよ。……成功。そして三回目！　……成功。やったわ、全部成功ね！　「いい調子ね、これなら楽勝よ！」
GM：三回成功というわけでニーノは飛び越えることに成功しました。さて、残った二人ですが、……ラストチャンスで、リロールしますか？
ルカ：よし、リロールするぞ。【希望4→3】……失敗です！
イクル：リロールしまーす。【希望5→4】今度こそうまくいきますように。……失敗。あー、そんなぁ。
GM：あー。二人のウサギはジャンプしたはいいけれど、飛距離が足りなくて穴だらけの地面へと落下していきます！
ニーノ：「二人がついてきてなーい！」ウサギを走らせながら二人の方へと顔を向ける。
GM：では失敗した二人は落ウサギ判定をしてもらいます。【勇気】＋〈騎乗〉を振ってください。［難易度3］です。［3成功］すれば助かるってことですね。失敗すれば落とし穴にはまってしまいます。
ルカ：ダイス数は3つ。ここはクリティカルコール！　……［2成功］。つまり失敗ってことだね……。「ああウサギ、もうちょっと頑張ってくれればぁ……」
イクル：よーし、クリティカルコール！　……失敗。さっきから出目が悪いよー。「うわぁー、落ちるー！」
GM：二人はウサギから落ちて穴にはまってしまいます。ウサギはどこかへ逃げて行ってしまいました。では［1D6－1］のダメージです。
ルカ：……１が出たね。
GM：お、当たりどころがよかったので、ノーダメージです。
イクル：……４。っていうことは。
GM：当たりどころが悪かったので3ダメージです！
イクル：「うわぁー、落とし穴痛いよー！　もうダメだぁ」とイクルは泣いてしまいます。【希望4→1】
ニーノ：イクルの希望があと1しかないよ！　
GM：誰か、イクルの友情を使って回復させてあげたら？
ルカ：じゃあ僕が友情を使って回復するよ。【友情:イクル1→0】
イクル：ルカありがとう。［1D6］の出目だけ回復できるんだっけ。ダイスの出目は、……１。あっ！【希望1→2】全然回復できなかった……。
ニーノ：じゃあ私も友情使いますね。【友情:イクル2→1】
イクル：二人ともごめんね～。……４。よかった、これで全回復だよ。【希望2→6】
GM：回復が終わりましたが、落ちた二人はまだ穴の中です。先に進んでしまったニーノはどうしますか？　二人は穴に埋もれていますよ。
ニーノ：えぇ～！　どうやって助けたらいいのかしら……。
ルカ：あー、こういう時は、「僕たちのことはいいから、早く子どもたちに食糧を届けてあげるんだー！」とかっこつけてニーノに向かって叫ぶ。
ニーノ：ルカの言うことは無視して。とりあえず、穴の位置まで戻って、二人をひょーいと荷台に乗せることは出来ますか？
GM：……いいでしょう。【勇気】＋〈冒険〉で振ってください。
ニーノ：二人とも今行くからね。……［2成功・2セット］！
GM：ふむ。ではもう一度振ってください。
ニーノ：もう一度ね。……［3成功］です！
GM：おお。ニーノが慌てて引き返し、穴に落ちた二人を引き上げると荷台にひょーいと乗せてくれましたよ。よかったですねぇ。
イクル：「ありがとうニーノ！　もう戻れないかと思ったよ」と涙ぐみながら言う。
ニーノ：腕を組んで「まったくもう、二人とも情けないんだから！」
GM：そしてニーノの運転するウサギ車は勢いよく走っていきます。おっと、だけどそのとき、草むらが揺れて……。
ルカ：「おや。……揺れた？」と草むらの方を凝視する。
GM：金色の月明かりに照らされた、ツキノワグマが姿を現した。……あれはプゥだ！
ニーノ・ルカ・イクル：「で、でたああああああ！」
ルカ：そういえばプゥは悪意にとりつかれているのかな？
GM：ウタカゼの君たちなら、プゥがとりつかれているかどうかがわかりますね。もしとりつかれているのなら、目が赤く光って見えるのです。
イクル：んー、プゥはどっちなんですか？
GM：じゃあイクルはプゥの目を覗きます。するとなんと、プゥの目はなんともなかった！
ニーノ：えっ、ということはプゥは正気ってこと!?
ルカ：素の状態であれだけ好き放題やってるっていうのかい。なんて厄介な！
GM：さぁさぁのんびりしている暇はありません、プゥはあなたたちのウサギ車へと近づいてきますよ？　走って逃げますか？
ニーノ：全力で、全速力で走りますっ！
GM：じゃあ……プゥと追いかけっこですね。
ルカ：なんて恐ろしい追いかけっこなんだ……。
ニーノ：「ちょっと運転するのは私なんだからね、なにもしてない二人は荷物でも押さえてて！」とものすごく焦りながら。
ルカ・イクル：「はーい……」しょんぼり。
GM：はい、それじゃあ〈騎乗〉で走らせてください。
ニーノ：はーい。えーと、……［4成功］です。
GM：すごい出目だなぁ。じゃあプゥとの追いかけっこが始まりました。プゥの疾走は［9］です。
ニーノ：え、9!?　今さらっとすごい数が……。
GM：プゥさんはハチミツがだーいすきだから、走るのも早いんだよう！　負けないぞう！（ノリノリ）
ニーノ：私だって負けないんだからね！
GM：では騎乗に成功しているので、〈疾走〉で対抗してください。
ニーノ：はーい。ダイスプールは6つです。……［2成功・2セット］。この出目じゃ、なんだか不安ね。
GM：リロールしてもいいんですよ？　それともこちらが振った後にします？
ニーノ：振った後でいいんですか？
GM：今回は許しましょう、この状況は難しいですからね。（ダイスを振る）……［4成功］です。
ニーノ：いやいや、無理でしょ！　え～、でもリロールします。【希望5→4】……［2成功・3セット］。「あ、大変、追いつかれちゃう！」
GM：ダッダッダッダッダッダッダッ！（プゥの足音）
ルカ：「ひえ～！　こっち来る！」迫りくるプゥに驚きながら。
GM：プゥはウサギ車を追い越すと、そのまま前方に回り込み、通せんぼをするかのように立ち上がった！　やつは戦闘態勢に入っているぞ!　というわけで戦闘に入るわけですが、その前に全員【勇気】を振ってください。
ニーノ：【勇気】だけですか。……［2成功］です。
ルカ：……［2成功］だね。
イクル：……失敗。あー。
GM：プゥのとてつもない威圧感に、イクルは震えたまま何もできなくなってしまいました。
ニーノ：えええええ!?
ルカ：「イクル―、しっかりしてくれー！」とイクルを必死に揺さぶる。
イクル：「こわいこわいこわいこわいこわい……」と、うわごとのように呟いて体をがくがくふるわせています。
GM：さぁ、月明かりに照らされたプゥが、鼻をひくつかせながら近づいてきますよ。どうしますか？
ニーノ：あー……。
ルカ：じゃあ、食べ物を囮にして、その隙に逃げるとか……。
ニーノ：（ルカを無視し）「撤退なんて冗談じゃない。私は戦うわ」と言ってウサギから降りて剣を抜きます。
ルカ：（そろそろ無視扱いにも慣れてきたなぁ）
GM：じゃ、先攻後攻決めますかね。こちらは……２です。
ニーノ：……４です。私の方が大きいからこっちが先攻ですね。じゃあ、リーダーの私から行くわよ！　クマさんに飛びかかりますよ。……［2成功・2セット］です！　「やぁああああ！」
GM：ふむふむ。ニーノはプゥの鼻先めがけて飛び上がりました。それではこちらの対抗判定を……（ダイスをたくさん用意している）。
ニーノ：うわ、なんかすごい用意してる！
GM：さーて行きますよ（サイコロをたくさん振る）えーと、こちらは……［5成功］です。
ニーノ：勝てるわけない！
GM：飛び上がって切りかかったニーノでしたが、彼女の剣はプゥの鼻先にぴたんと当たっただけで、軽くくしゃみをする程度でした。
ニーノ：「うっそー、なんで効いてないのよ!?」と文句を言って、地面に真っ逆さまに落ちていきます。
GM：そうですね。次の行動順はイクル。……イクルは震えていますね。
イクル：「こわいこわいこわいこわいこわい……」と相変わらず体を震わせている。
GM：そういうわけなのでルカ。あなたの番です。
ルカ：わかりました。「ボクのボウガンで、プゥの鼻を狙ってやる！」とボウガンを構えます。
GM：それでは【知恵】＋〈狩り〉ですね。（GMのダイスがごっそりと減る）
ルカ：これは……、行けるかもしれない。どうだっ、……［2成功・2セット］！
ニーノ：でもなんだか心細い出目ねぇ。
ルカ：そんなこと言うなよ。考えないようにしてたんだからね。
ニーノ：ああ、そう……。（思いっきり顔に出てたんだけどね）
GM：さてさて、どうなるかな。……［2成功］。あ、……痛い！
ニーノ・ルカ：……へ!?
GM：ルカの放った矢がプゥの鼻に当たりましたよ！　プゥは矢の当たった鼻を押さえて、そのまま茂みへと去っていきます。
ルカ：「ふー。どうだ、ボクのボウガンの腕は！」とボウガンを掲げて勝ち誇る。
ニーノ：「イクル、もう大丈夫よ。プゥは逃げて行ったわ！」震えているイクルを落ち着かせる。
イクル：「ほ、ほんと？　こわかったぁ……」と周りを見渡した後、ほっと一息。
ニーノ：それじゃあGM、先に進みましょう。ウサギに飛び乗って、「ほら二人とも、ちゃんと乗った？」と荷台の二人へ振り向く。
ルカ・イクル：「はーい」
GM：それでは、再びウサギ車は走り出します。が、もっと早く進みますか？
ニーノ：ええ、急ぎます。もう、なんだか怖いから急ぎます！
イクル：またプゥが出てきたら大変だもんね。
GM：では【勇気】＋〈騎乗〉を振ってください。
ニーノ：えーと、……［2成功・2セット］ですね。
GM：ほう。次に〈疾走〉を振ってください。
ニーノ：えー、……１２３４５６……失敗。うわ、また順に並んだ……！　リロールしていいですか？
GM：ええ、どうぞ。
ニーノ：ではリロール、【希望4→3】あ、もう希望3しかないや。
ルカ：あとでボクが回復しておくよ。
ニーノ：あ、ほんと？　ありがとう。よーし、……［4成功・2セット］。なぜこれが戦闘中に出ないの。
GM：だんだんと夜が明けてきました。遠く東の方にそびえる山の向こうの空は、うっすらと明るくなっていますね。
イクル：「もう朝かぁ。色んなことがあって休めなかったよ」とあくびをします。
ルカ：じゃあニーノ、回復するよ。【友情:ニーノ2→1】
ニーノ：わーい、……４、全回復！【希望3→6】ありがとうルカ！
GM：こうして三人は寝ずに進むのでした。


【第四章　～村が見えた！～】

　それから三人はティトの村を目指して再び森の中を進みました。森にはリス族やモグラ族がいて、彼らと一悶着あり、進むのにちょっと時間が掛かったのです。ときどきプゥの気配を感じては見つからない様に慎重になったり、見つかってまた追いかけっこをする羽目になったりと、かなりハードな道中を進んで行き、そして森を抜け、とうとう出発から三日目の朝がやってきました。

GM：と、いう感じで途中、色々とクエストがあったと思ってください。時間もあまりないのでね省略しましたが。仕方ありませんけどね。
ルカ：なるほど。（額の汗を拭うふりをして）いやぁ、長く苦しい戦いだった……。
ニーノ：激しく苦しいクエストでしたね……。
GM：（なんだ、この茶番みたいなノリは）……さてウサギ車は草原の広がる、開けた道を進んでいます。そして、朝日とともに、見えてきましたよ。ティトの村が！
ニーノ：「みんな見えてきたよ……ティトの村が！」と喜びに満ちた表情で言います。ふぅ、ずっと運転してたから大変だったろうなぁ。
イクル：ニーノおつかれさま～。
GM：すると！
イクル：（ドキッ！）うわぁ！
ルカ：うわああ、イクルしっかりしろー。村はもうすぐだぞ！
GM：あなたたちを見つけた村人たちが、遠くから手を振っています。
イクル：あぁ、よかった～。またなにかあるのかと思ったよ。
GM：村人たちは必死に手を振っています。なにかを伝えたいのでしょうか。
ルカ：えっ、あれ？　ちょっと待ってもしかしてこれ後ろに……。
ニーノ：えっと、なにか話している声とか聞こえますか？
GM：じゃあ、【知恵】＋〈感覚〉でどうぞ。
ニーノ：「ルカー、ちょっと荷台の中からなにか聞こえるか、確かめてくれない？」
ルカ：「わかったよ。どれどれ」……［2成功］。
GM：すると、「後ろ、後ろ―！」　村人たちが叫んでいるのが聞こえてきました！
ニーノ：「え、後ろ？　後ろがどうなってるの？　私の所からじゃわからないわ！」と気になってルカに尋ねる。
ルカ：予想が当たって、「ああ、やはりか……。なんてこった」と絶望します。
イクル：「え、後ろ？」ウサギ車の後方へと振り返る。
GM：なんとウサギ車の後ろから、プゥが追いかけてきています！
イクル：前のトラウマがよみがえり、「うひゃああああああ！」
ルカ：「イクル―、しっかりしろー！　弱すぎるよお前―」とイクルの体を支える。
GM：このままではプゥが追い付いてしまいますよ。ですが、ティトの村にあるウタカゼの木の範囲にまで来たら、プゥも近寄れないはずです。
ニーノ：とりあえず全力で村の方へ。「ウサギさんごめんね」と、休ませなきゃと思いつつも、ウサギを全力で走らせます。
GM：では、いつも通り【勇気】＋〈騎乗〉です。
ニーノ：あー、クリティカルコールしようかな、どうしようかしら。
GM：ああ、その前に。【知恵】＋〈学問〉、または【知恵】＋〈感覚〉がある人は、振ってください。
ルカ：それならボクの出番だね。……［2成功・2セット］だ。「ん、なにかおかしいぞ……？」
GM：すると、ウサギ車の車輪がふらふらとしているのに気づきます。長旅で傷んでしまったのでしょう、このままではウサギ車が壊れてしまうかもしれません。
ルカ：「これはまずいぞ。村までもたないかもしれない！　今から修理するよ！」と二人に叫びます。
イクル：ええっ。でもどうするの？　「プゥが追いかけてきてるのに、止まるわけにはいかないよー」とルカを止めようとします。
ルカ：「そんなの、走行中に修理してしまえばいいのさ！」
GM：修理するならば、【知恵】＋〈学問〉ですよ。
イクル：でもこのすごい早いスピードで進んでるのに、大丈夫なのルカ？
ルカ：任せてよ。何とかしてみせる。それっ、……［2成功・2セット］だ！
GM：あー、普通の修理なら出来たんですけども、あまりにウサギ車が早いので、思うように行きませんでしたよ。
ルカ：なんてこった、かっこいいこと言っておいてこれだよ。かっこわるいなぁ。
GM：イクルはどうしますか？
イクル：じゃ、じゃあ。プゥに〈説得〉してみようかな？
GM：〈説得〉は出来ませんよ、プゥは言葉をしゃべりませんからね。
イクル：あ、間違えたよ。説得じゃなくて〈心話〉でどうかな？
GM：じゃあ〈心話〉で。……難易度は3にしましょうか。
イクル：よーし、プゥさんに伝わりますように。……［4成功］ですよ！　「お願いです、僕の声を聴いてください！」と両手を合わせます。
ルカ：よくやったイクル、あとはお前を信じてるからな！
GM：イクルとプゥの心が通じたとき、イクルにもプゥの気持ちがわかってきます。どうやらプゥは、そのハチミツがせめて、せめて一壜だけでもほしいと思っているのです。
イクル：うーん、一壜くらいなら……。
GM：でもどうやら、それは自分のためではなさそうですね。
ニーノ：「どうしたの、うしろでなにが起きているの？」と状況がわかっていない様子です。
ルカ：「どうだイクルなにかわかったか？　まずいぞ、もうウサギ車が持たないんだ！」
イクル：決心して、「ねぇ二人とも。このハチミツが、プゥにも必要らしいんだ。だからね、一壜だけでも、あげていいかな？」と尋ねます。
ルカ：「なんだって、それは本当かい？」
イクル：「本当だよ」
ニーノ：少し疑って、「一壜上げたら、本当にプゥは帰ってくれるの？」
イクル：うーん、ちょっと聞いてみるよ。
GM：正直なところ、プゥは全部ほしいと思っているんじゃないかな～。
イクル：え、え～……。
GM：でも一壜だけでもという気持ちはあるみたいです。「おいしいハチミツを、あの子に食べさせてあげたいんだ」そんな気持ちがイクルに伝わってきます。
イクル：「ということらしいんだ。だから……」とニーノへ必死に説得する。
ニーノ：やれやれと溜め息を吐いて「一壜で譲歩させてよ？」
イクル：「ありがとうニーノ」じゃあ一壜だけ、プゥに渡すよ。
GM：どうやって渡しますか？
イクル：んー、投げるとか？
ニーノ：ちょっと、それでパリーンなんていったら洒落にならないわ。
ルカ：投げるの？　止まった方がいいんじゃないかな。
ニーノ：止めたら、プゥに襲われたりしちゃうんじゃない？
ルカ：え、だってイクルは今、プゥと心が通じ合ってるんでしょ？
イクル：今もまだ通じ合ってるんですか？
GM：はい、通じ合ってますよ。
ルカ：つまりだよ。今、ハチミツを降ろすから、待ってくれって頼めばいいんじゃないか？
イクル：（こくりと頷く）じゃあ頼んでみるよ。
ニーノ：ウサギ車は止めるの？
ルカ：このまま走り続けたらウサギ車がぶっ壊れちゃうんだよ！
GM：どうしますか、止めます？
ニーノ：（渋々と）……止めます。
GM：ウサギ車を止めると、プゥが鼻をくんくんさせながら近づいてきますよ。すーごーくブラックバスに興味を示しているみたいですね。
ニーノ：「イクル、あとは信じたからね！　ちゃんと交渉してきてよ」
イクル：「わかってるよー。大丈夫だから」
GM：さぁ、イクルは一人、ハチミツ一壜を持ってプゥの前に立ちます。
イクル：「プゥさん、この一壜だけで我慢しくれないかな？　僕たちにも、待ってる人たちがいるんだよ」と少し怯えて話しかけます。
GM：じゃあそれを、心話で、説得してください！
ニーノ：ちなみに、今のうちに車輪を修理することは出来ますか？
GM：はい、出来ますよ。【知恵】＋〈学問〉で振ってください。
ルカ：じゃあ今のうちに修理しちゃおうか。……［3成功・2セット］だ。「パパッと終わらせてやる！」
GM：おーけー、ちゃんと修理できましたよ。
イクル：じゃあ今度こそ心話で交渉するよ。……［3成功・2セット］だよ。
GM：……するとプゥは譲歩はしましたが、ブラックバスから目をそらさずに、嗅いでますね。すごい欲しそうですねぇ。
イクル：ちょっと悩んで、「ごめんね、一壜だけで勘弁してもらえないかな」
GM：……プゥもイクルとブラックバスを交互に見ていましたが、やがてイクルの気持ちに通じたのか、大人しくハチミツを受け取ると、その場にじっと座ってしまいました。
イクル：（やっぱりハチミツだけじゃ足りなさそうだよね……）
ニーノ：プゥがハチミツを受け取ったのを確認してから、「じゃあ出発するから、二人とも乗ってー！　はやく村の人たちに届けてあげないと」
ルカ・イクル：「はーい！」
GM：そしてガラガラと、ウサギ車は走っていきました。プゥは、あなた達を見送るように座っていましたが、やがて立ち上がり壜をくわえて、茂みの奥へと入っていきます。茂みの前には二匹の小熊が。……プゥの顔には、ちょっともう一壜欲しいかもといったようなものがあります。
イクル：「やっぱり子どもがいたんだねー。……もう一壜あげる？」とプゥに同情している。
ニーノ：「だーめ。そのまま村まで行くよ。これを待っている人だっているんだから」
GM：ウサギ車はそのまま真っ直ぐ走っていき、ようやくティトの村へと到着しました。ウタカゼたちの周りに、彼らを待ちわびていた、たくさんのコビット族が集まってきます。
村人（GM）：「ありがとう！　こんなにでっかいブラックバスは見たことないよ。さっそく焼いて食べよう！」と、とても嬉しそう。
ニーノ：「いっぱいあるからねー！　だいじょうぶだよ！」

　そしてその夜、ティトの村では、久しぶりにやってきた食糧とウタカゼたちへの感謝を表すために、お祭りが開かれました。そこではたき火が行われ、ブラックバスが焼かれ、果物を食べ、とても楽しい夜を過ごしたのでした。……そしてどこか遠くで、プゥは小熊たちにハチミツをあげているのでした。

【エピローグ　～朝焼けの向こうへ～】

GM：そして翌日、まだ朝日の昇らない頃に、ウタカゼたちはウサギ車に乗り込みました。帰りに村人から、「もしよろしければ、このクワの実をウタカゼのみなさんに渡してください。たくさんあります。あ、あと葡萄酒も」と、たくさんのお礼をもらい、ウタカゼたちはウサギ車でティトの村を発ったのでした。
ニーノ：よかったー、喜んでもらえて。
ルカ：でも、もうプゥには会いたくないな。
イクル：夜に会ったときはおっかなかったもんね～。
GM：そんなときです。帰り道を進む、あなた達の脳裏に、ウタカゼの師の言葉が浮かぶのでした。
クライド師（GM）：「プゥは葡萄酒もだーいすきなんだ。特に、葡萄酒を飲んだ時のプゥは手がつけられないぞ！　辛いとは思うが、これも試練だと思って乗り越えるのです……」
ニーノ・ルカ・イクル：「師匠―、今更そんなこと言われても！」

　安心して帰れる。そう思ったウタカゼたちは、またあの果てしなく辛い道のりが待っているのかと思うと、やっぱり心の中に疲労や絶望など、ちょっぴり暗い感情が芽生えるのでした。
だけど彼らは諦めません。なぜならウタカゼは勇気の持ち主。誰にも負けない強い心を持っているのですから。
　――ほら、また陽が昇る。そう、彼らの勇気は、輝く朝日のように何度でも立ち上がって困難にぶつかっていくのです。そして世界に風を吹かせ、歌を届けるのです。

　ニーノ、ルカ、イクルの三人の冒険はきっとこれからも続くことでしょう。そしてまだ見ぬ多くのウタカゼたちの物語も、まだまだこれから生まれてくるはずです。
　もしかしたら、次に物語を紡ぐのは、これを読んでいるあなたなのかもしれませんね。