はじめてのテーブルトークRPG
テーブルトークRPG初心者のみなさまも、
そうでもないみなさまも初めまして!
ゲームマスター歴約5年、比較的新人の蜂飼と申します。
早速ですが、テーブルトークRPG(以下TRPG)を始めたい人たち、特に「TRPGを始めたいけど、仲間が誰もやってくれないからゲームマスターやることになった」人たち……いますよね?
とはいえ、はじめてのゲームマスターは不安や色々な準備もつきもの。その上、はじめてのTRPGをやるプレイヤーがいたら説明もけっこう大変。
この記事ではそんな皆様を少しだけサポートして背中を押すことができればと思います。
よろしくお願いいたします。
まずは、「TRPG」について
簡単に説明できればと思います。
TRPGとは、「デザイナーが作った世界の中で」「ゲームマスターが用意したシナリオを用いて」「プレイヤーがキャラクターを作り」「役割を演じて遊ぶゲーム」だと思っています。
TVゲームではコンピューターが計算してくれるところも、すべて人力で計算します。サイコロを握りキャラクターシートを見つめながら、人と人が会話して進めていきます。
とはいっても文章では説明しにくいので、ファンタジー世界のイラストを基に、ゲームマスターとプレイヤーのロールプレイの例を出してみたいと思います。あなたはプレイヤーになったと思って、次のページの文章を読んでください。
これらはすべて、ゲームマスターがあなたに向けて語っているものだと思ってください。
……さて、プレイヤーの「あなた」はもう自由に行動してかまいません。何をしてみたいですか?
これが例えばデジタルゲームの場合、十字キーを動かして移動したり、コマンドを選んで近くのキャラクターに話しかけてみたりするでしょう。すべて、自分の脳内で考え、自分の手で物語を動かします。
ですが、TRPGでは代わりにプレイヤーに宣言してもらいます。先程の文章でも、最後に「何をしてみたいですか?」とゲームマスターは聞いてきましたね。
さて、「あなた」は何をしましょうか?
この酒場はとてもにぎやかなので誰に話しかけるかだけでも迷ってしまいそうですね。
壁に貼られた依頼を見てみる、一度お店をゆっくり回ってみる、あなたに話しかけてくれた冒険者に声をかけるなど、選択肢は山のようにあります。
あなたの行動によってゲームマスターや他のプレイヤーが話を膨らませてくれることもあります。
遠慮なく発言してみましょう。
……また、もしあなたがゲームマスターなら「この人か、この人に話しかけられるよ」と選択肢を示してあげるといいでしょう。
もしくは「では、ここで【交渉】の判定をしてみましょう。判定の仕方は……」とサイコロを実際にプレイヤーに振ってもらい判定の練習をするのもいいかもしれません。
プレイヤーが選択肢に迷っているようなら、ゲームマスターであるあなたから話を提案しつつ、プレイヤーに少しずつ慣れてもらうようにする……というのもよいでしょう。
「では、奥にいた冒険者があなたに話しかけてきます。『おいおい、その子戸惑ってるじゃないか。──なぁキミ、僕らこれから冒険に行くんだけど、1人足りないんだ。一緒にこの依頼を受けてくれないか?』」
といった感じです。
プレイヤーとうまく呼吸を合わせてシナリオが進行できるといいですね。
TRPGでよく使う用語のまとめです。
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○D☆
「☆面ダイスを○個振る」という指示。ダイスはサイコロのこと。「2D6」なら「6面ダイスを2個振る」、「1D20」なら「20面ダイスを1個振る」となる。
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PVP
(ぴーぶいぴー)プレイヤー同士が敵対関係になること。大体のTRPGはプレイヤーはチームを組むなど協力関係であることが多い。
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イニシアチブ、
イニシアティブ行動順を決める数値や行動順のこと。これを決める判定を「イニシアチブロール」などと呼ぶ。
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イベント
シナリオ中に発生する局面のこと。クリアしないとストーリーが進まない場合もある。
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エラッタ
ルールブックなどの修正箇所をまとめたもの。大体公式ホームページに掲載されているため、遊ぶ前にチェックしておくといいだろう。
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オフライン
セッション「オフセ」とも。公共施設やカラオケ、誰かの家など、実際に集まり、顔を合わせて行うセッションのこと。
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オンライン
セッション「オンセ」とも。インターネット上で行うセッションのこと。
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下方判定
(かほうはんてい)行為判定の種類の1つ。目標となる値以下の出目を出すと成功になる(例:6面ダイスを振って4以下が出れば成功)。
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期待値
(きたいち)ダイスを振った時に出る目の平均値。行為判定の難しさの目安や、大体どれくらいのダメージになるか予測したい時などに使用する。
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キャンペーン
同じキャラクターで、ストーリーに連続性があるシナリオを遊ぶこと。
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ゲームマスター、
GM(ジーエム)ゲームによってキーパー(KP)など、様々な呼び方がある。シナリオを用意しキャラクターを導く役職。
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行為判定
判定、ロールとも。プレイヤーが取った行動がうまくいくかをダイスを振るなどして判定し、成功か失敗かを決める一連の行為のこと。
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コンベンション
大きな会場で複数の人々がTRPGを同時に遊ぶ場所。また、それができるイベント。全国各地で行われている。
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サプリメント
ソースブックとも。ルールブックの後に発売される、追加のルールやデータが掲載された商品。
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サマリー
基本的なルールやゲームの進行手順などを簡潔にまとめた資料。主に公式ホームページで手に入れることができる。
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システム
ルールブックに書かれているゲームのルールやデータの総称。デジタルゲームで言うゲームソフトのプログラム。それぞれ世界観や雰囲気が異なる。(例:クトゥルフ神話TRPG)
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上方判定
(じょうほうはんてい)行為判定の種類の1つ。目標となる値以上の出目を出すと成功になる(例:6面ダイスを振って4以上が出れば成功)。
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セッション
1回のTRPGを始めてから終わるまでの区切りのこと。何回遊んだか、という単位に使用されることもある。
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卓(たく)
TRPGにおいては卓はテーブルを示すということから、セッションの別名として使われる。「卓を囲む」とも。
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どどんとふ
たいたい竹流氏製作のオンラインセッション支援ツール。オンラインセッションに必要な機能の大半をカバーしているため、愛用者は多い。
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ハウスルール
ゲームマスターや参加メンバーの嗜好、円滑なセッション進行のために設定されたオリジナルルールのこと。
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ハンドアウト
2つの意味がある。
①ゲームマスターからプレイヤーに配られる資料全般。
②キャラクターの持つ特有の設定やデータを示す資料。 -
リプレイ
実際にTRPGをプレイした記録を書き起こしたもの。動画や漫画、小説のようなものなどさまざまな種類がある。
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ルールブック
実際にTRPGを遊ぶうえで基本的に必要なものがすべて掲載されている本。
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ロールプレイ
キャラクターとして発言や行動を行うこと。
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ロスト
キャラロストとも。セッション中にキャラクターが死亡してしまうこと。ロストキャラクター専用のシナリオや、ロストがそもそも存在しないシステムもある。
万全の体制でセッションを楽しもう!
時間と場所
TRPGのセッションは3〜4時間、場合によってはそれ以上かかります。公共施設やカラオケなど、場所を借りる際は時間に気をつけてください。
コンベンションやイベントに参加する場合は「集合時間」と「集合場所」を確認しましょう。寝坊、ダメ、絶対。
オンラインセッションの場合、場所を手配する手間は薄れますが、オフラインセッションよりも時間がかかるのが難点です。日を分けてセッションを行うなど、工夫をする必要があります。
シート類
キャラクターのデータや設定を書き留めておくキャラクターシートなど、色々なシートが必要になります。
システムによって準備するシートの種類は異なるので、ルールブックでしっかり確認して、準備を忘れないようにしましょう。
調整係
全員の予定を調整したり、プレイする場所を確保したりする係です。ほとんどの場合はゲームマスターが兼業することが多いのですが、可能だったらプレイヤーの誰かが変わってあげると負担を分担できてよいでしょう。「ゲームマスターが得意」「みんなの予定調整が得意」「場所の手配が得意」というのは同じスキルではありません。もし、プレイヤーの中で連絡を取り合ったり、場所を手配したりするのが苦ではなかったり得意な人がいたら代わってあげてください。
TRPGを遊ぶメンバー
ゲームマスター
全員がプレイヤーになる「ゲームマスターレス」、あるいは1人で遊べる「ソロプレイ」のセッション以外は誰か1人が必ずゲームマスターになります。
後のページで詳しく解説しますが、ゲームマスターには色々と準備するものがあります。
人によっては強い負担を感じることもありますので、積極的にプレイヤー側からも協力してあげてください。
プレイヤー
プレイヤーがいないとキャラクターは産まれません。
1人で遊べる「ソロプレイ」が可能なシステムも増えてきましたが基本的には複数人必要です。
お気軽にみんなと遊んでみよう!
まだあまりTRPGの経験がない人が誰かのプレイヤー募集に手を挙げるなら、最初に初心者であることを伝えておきましょう。初心者は誰だって通る道です。恥ずかしいことでも、隠すべきことでもありません。堂々と、宣言して経験者の人たちに教えてもらえばいいんです。
注意する点は、初心者に対応できないゲームマスターもいるということ。不慣れな場合、自分のことで精一杯で初心者のサポートをしきれないので参加はご遠慮いただく……という場合もあるでしょう(もちろん、初心者でも全然大丈夫、むしろ一緒に勉強しましょう! という人もいるでしょう)。ゲームマスターとしては、いざセッションを始めてみたら何も知らなかった、という方が困ります。初心者に対してはそれなりの対応や準備(ルールの説明を多めにしたり、シナリオの展開をシンプルにしたり)が必要になるからです。
まずは「オフラインセッション」に参加するのか「オンラインセッション」に参加するのかを決めましょう。次に、セッションの場所を探します。
情報源には、TwitterなどのSNS、その他のインターネット上のサービス、ショップの掲示板や置かれたチラシ、『RoleRoll』本書の「サークル&コンベンション情報」などがあります。
ゲームマスターにとって一番困るのは、ゲームプレイ当日にプレイヤーが来れなくなってしまうことです。前日はできるだけ早めに寝ましょう。寝坊してしまった、という事故も当日焦りの元になってしまいます。余裕を持って行動できるとよいですね!
TRPG(テーブルトーク“ロールプレイングゲーム”)とあるように、TRPGではロールプレイが必要です。
ロールプレイというと、キャラクターになりきってセリフをしゃべったりする「演技」が必要であると思われているかもしれません。確かに演技をした方がセッションが盛り上がりますし、よい演技は時に人の心を動かすことすらあります。
ですが、演技は「必須」ではありません。無理して演技をしなくてもいいんです。「じゃあ、剣で敵Aを斬ります」「そこで『そうはさせないぞ』と言って立ちはだかります」というような、「宣言」も立派なロールプレイです。
まずはそこから始めてみましょう。
発言することを恐れずに、まずは思ったことをみんなに伝えましょう。あなたのそのちいさな「発言」が時にラスボスを攻略する手掛かりになったりするのです。
よく、ゲームマスターに対してものすごく警戒したり、発言を信じないプレイヤーがいます。
勘違いしてはいけません。ゲームマスターは一緒に楽しくゲームを遊んでいる仲間です。できれば全員生還でシナリオをクリアしてほしいと思っています。
ですので、あまりゲームマスターを疑いすぎないでください。ゲームマスターがそこに罠がないと言ったらないんです──実際は罠があって、判定の結果キャラクターが罠に気づけなかったのかもしれませんが、それは意地悪で言っているわけではなく、ゲーム的に正しい返答をしているだけなのです。
「今日遊ぶ前にこういう〇〇(映画やマンガなど)を見てきました。面白かったのでこういう感じでやってほしいです」と言われたことがあります。
こういうお願いはちょっと困ってしまいます(対応できる人、逆に喜ぶ人もいるかもしれませんが)。ゲームマスターは十人いれば十通りのやり方と、シナリオの回し方があります。事前に相談があれば対応できるかもしれませんが、当日いきなり言われても対応するのは難しいでしょう。
その作品を知らない人をおいてきぼりにしたり、他の人に迷惑をかけたりしなければ、自分のロールプレイに特定の作品の登場人物やセリフを取り入れることは悪いことではありませんが、あくまで参考にする程度にしましょう。
そのセッションで起こった出来事や他のプレイヤーとのやり取りを通して、「自分たちの」物語を作り上げてください。
もしはじめての卓で大変な思いをしても、できればそこでTRPGをやめないでほしい! と思っています。
TRPGは人と人とのやり取りなのでどうしても相性の良し悪しがあります。入ってみたコミュニティになじめなかったり、あまりうまく交流できないということもあるでしょう。
でも、それはあくまでその人(たち)との相性が悪かっただけ。できればたくさんの人と出会って、たくさんの卓を遊んで、その中でずっと遊べる仲間を見つけてください。
長く一緒に遊んでいる仲間とやるセッションは格別の楽しさがあります。気心知れた人だからこそできるロールプレイというのもありますね。
これから遊ぶ皆さんも、ぜひそんな仲間と出会う日がくればいいなと思ってます。
はじめてゲームマスターをするあなたに。
さて、初心者の方にはやがて通っていただきたい道、そして今回一番お伝えしたいことが「ゲームマスターデビュー」です。
はじめてゲームマスターをする時は周囲にそれを伝えましょう。ベテランのプレイヤーさんならもしかしたらルールの解説を手伝ってくれるかもしれません。
そして、プレイヤーにも協力してもらいシナリオを進めていくことが、ゲームを失敗させない一番の方法です。
新しいことを始める時は、自分の意志で始めることが、一番長続きしてかつ技術が上達するコツとなります。
システムを選ぶ際に重要なのは「自分自身が」あるいは「一緒に遊ぶ仲間が」「何のシステムで遊びたいか」です。ちょっとルールが難しいシステムやデータが多いシステムは「初心者向きではない」とされることが多く、その意見も決して間違いではないのですが、「簡単だけどあまり興味がないシステム」よりも「ちょっと難しいけど興味のあるシステム」を選んだほうがやる気も出ますし、セッションがうまくいく可能性も高いと思います。
遊びたいシステムを決めたら、次に遊ぶシナリオを決めましょう。
はじめてゲームマスターをやるとき、本来ならばルールブックに掲載されているシナリオが解説なども詳しく、かなりおすすめなのですが……。
ここでも重要なのはゲームマスターをやるあなたの意志です。どんなシナリオをやるかは、あなた自身が決めてください。
「動画でやっていたシナリオが楽しそうだからやってみたい!」
「コンベンションで遊んだシナリオが面白かったから他の人ともやってみたい!」
という理由でシナリオを決めたほうがあなたのやる気は上がりますよ。
セッション前にルールブックの復習をしておきましょう。当日ルールを把握しておくため、というのもありますが、細かいルールを使用する際、ルールの確認に時間をかけないためというのもあります。
ルールを暗記する必要はありませんが、「どこに何が書いてあるのか」を把握しておけば、確認もスムーズになります。ふせんを貼っておいたり、セッションで使いそうなルールの参照ページを書き出しておくと便利です。
ルールを守ることは「絶対」ではありませんが、基本を忘れてしまっていると、プレイヤーに教えることもできませんし、いざという時の判定でいちいちルールブックを見ていては大幅に時間がかかってしまいます。
ルールブックに掲載されているならばリプレイを読んだり、改めてシナリオを読み込んでおくのもおすすめです。
実はセッション後の時間も大切なものです。
セッションが終わった後はまず「お疲れ様でした」と皆で言いましょう。シナリオを用意してくれたゲームマスターや遊んでくれたプレイヤーに対する敬意は忘れてはいけません。
もし時間があればみんなで感想会をして、今日のゲームを振り返りましょう。
「あの時のロールプレイ、妙にはまってたね!」
「ラスボス戦の連携よかったよね〜」
などなど、みんなで楽しかったことやよかったことを共有しましょう。
公共施設などの場所を借りていた場合、その場所の規則に従って後片付けをしましょう。忘れ物にも注意。ダイスは見落としやすいので特に気を付けたいですね。コンベンションではダイスが増えたり減ったりします(!?)ので自分のダイスはちゃんとチェックしておきましょう。
後片付けはオフラインセッションに限った話ではありません。オンラインセッションの場合はサーバーの後処理があります。ログを残したままにしておくとサーバーが重くなることもありますので、ゲームが終わったらちゃんとログは消しておきましょう。
削除する前に後から見返すためにログを保存しておくのもいいですよ。
今回の記事では色々と書きましたが、最終的にはこの一言に尽きます。
「遊びだから気軽にやりなよ!」
そう。TRPGは遊びなのです。気の合う友人や仲間と笑いながら楽しむ遊びの中の1つ。
気負い過ぎず、肩の力を抜いて遊ぶくらいでちょうどいいということを忘れないでくださいね。
今回はページを増やしていただいた分、シナリオに関する簡単な解説も掲載しましたが、いかがでしたでしょうか。
もし、「こういうのも書いてよ!」というご要望がありましたらぜひRole&Roll編集部までお願いします。
もし初心者向け記事の需要が高ければ、またこうして記事を通して皆さんのお目にかかれる日があるかもしれませんね。
では、またどこかでお会いしましょう。